エビススーパー耐久シリーズ番外編

AE92レビン5バルブ化計画


98年の秋にあるショップに依頼して製作してもらったAE92のエンジンも、さすがに耐久レースに9戦出場しただけあって、だんだんパワー感が無くなってきた。

そりゃそうだ、8000rpm常用で57時間もレースに使ったのだから。(4+6+9+4+4+6+6+9+9=57時間ね)

今まではAE92後期型ベースに純正パーツの組み合わせで少しチューンしてあったらしいが、せっかくだから自分たちでエンジンを製作してみようと言うことになった。

2001年の2月から作業を始め、本当は2001年4月の6時間耐久からデビューさせるつもりだったのだが、作業が間に合わないという事で、8月の12時間耐久でデビューという事になってしまった。

ここではそのエンジン製作、載せ換えの様子を、レースレポート番外編という事でお送りしたいと思う。


2001年2月

2000年シーズンも終了し、最近他のエントリー車がえらく速いのが多いと言うことで、ここissi君宅のガレージでは、2001年に向けて新しいエンジンを搭載しようという作戦が練られていた。

そのエンジンとはAE101に搭載される5バルブ4A-Gである。これをOHがてら少しチューンして搭載しようというわけである。

しかし問題になるのが、エンジンコントロールをどうするかという事である。AE92に搭載される4A-Gは圧力センサ方式、AE101の4A-Gはフラップ式エアフロでエンジン制御しているという違いがある。

この違いをどう乗り越えるかで我々はもめにもめた。

最初はAE101のコンピューターをハーネスごと移植してしまおうという方法を考えたが、あまりこれではパワーアップにならない。フラップ式エアフロが抵抗になってしまうのだ。

そこで考えたのが、ハーネス、センサ類、コンピューターはそのままAE92のものを使用し、コンピューターのセッティングを変更する事で5バルブ4A-Gを制御しようというのである。

コンピューターのセッティングは現在のTRDマルチECUの調整ダイアルと、これに加えてA'pexのS-AFCで各回転数の燃調をとろうというわけだ。

まあ何にしてもエンジン本体の作業を終わらせないといけないので、雪かきをしないと入れない倉庫からエンジンを持ち出してきた。

こいつをまずは全バラし、洗浄してやる。灯油を使って、真冬の寒いガレージの中でしこしこと洗浄。

そしてお次はヘッドの加工である。この日の為にissi君が購入していたエアリューターで、ポートの中をピカピカに磨いてやる。まあ、みんな初めての作業なので、各ポートの形状が少し違って見えるのがご愛敬である(^^;)

右がおおざっぱな加工を行ったところ。左が加工前です。

見えにくいですが、結構ピカピカ(^^;)

そしてそれをコイン洗車場に持ち込んで完全洗浄とする。オイルが流れるので、良い子はマネしない様に(笑)

洗ったヘッドをエアで水分を飛ばし、そしてバルブシートの擦り合わせをして、ヘッドのほうは終了とする。

今回はヘッド面研とかシートカットという作業はせず、お気楽OHで済ますという方向で行く事にしたのだった。


これでヘッドの加工は大体終了であるが、実はエンジンバラシからここまで約1カ月かかっている。

さすがに週末だけの作業、しかも初めてのエンジン作業と言うことで、なかなか進まないのである。


2001年3月

もう3月になってしまい、あんまり時間が無いので早速先月加工を行ったヘッドを組み立てて行く。

まずはバルブをヘッドに組み付けるのだが、5バルブ4A-Gはバルブ径が小さく、汎用のバルブスプリングコンプレッサーが使用出来ず、適当なスペーサーを溶接して何とか使用する。

コッターピンと格闘しながらなんとかバルブが無事組み付いた所で、バルブクリアランス測定をしてみると全部基準値内に納まった。

シムを購入せずに済んで一安心(^^;)

ヘッド組み付けが終了したので、その次はピストン、コンロッドの各気筒での重量合わせを行う。コンロッドとピストンの組み合わせで気筒間1グラム以内の重量誤差に納める事にする。

削るのはコンロッドの側面と、ピストンの裏側で強度がかからなさそうな部分である。

コンロッドの側面なんかはペーパーで磨いてピカピカにしてやった(笑)

右が加工途中、左が加工後。なかなか良い輝き(笑)

そして出来上がったピストンとコンロッドを組み付け、ピストンピンをピストンに取り付けてやる。

なお、ピストンリングは予算の都合上再使用する事になった(^^;)

#ちなみに今回のエンジンは再使用パーツが多いのだ(笑)


ここまでは順調に進んだのだが、このとき3月末だというのにインフルエンザが大流行し、メンバーの数人が寝込むという事態が発生してしまった( ̄□ ̄;)

で、みんなで相談した結果、前回のレースレポートに書いた様に4月のレースは旧エンジンで参加する事となった訳だ。

というわけで、ここでエンジン作業はここで一時中断して、4月のレース準備に入った。


〜〜2001年4月はレースで作業出来ず〜〜


2001年5月

というわけで4月のレースも終わり、エンジンの作業を再開する事にする。

まずはブロック部をブレーキクリーナーを大量に消費して掃除し、クランクメタルをセットする。

その後クランクシャフトを組み付け、キャップを締め付ける。

次はいよいよシリンダーの中にピストンを挿入し、コンロッドとクランクをドッキングする。

なお、ここでもメタル類は再使用な上、クリアランスも測定していない(笑)

まあ、走行3万程度のエンジンだし、状態も良かったので大丈夫、ということにしておこう(^^;)

そしてとうとうヘッドとブロックがドッキングした。

ここまでくればもう少しである。今回VVTを殺すという事で色々試行錯誤が有ったのだが、スライドカムプーリーを購入する事で問題を解決し、エンジン単体が完成した!!

完成したエンジン。ビールケースは4A-Gのエンジンスタンドにピッタリ(笑)


2001年6月

さあいよいよエンジン載せ換えである。

まずはガレージを片づける事から始まり(笑)、レビンをガレージの中に入れてやる。

そしておもむろにジャッキアップしウマをかけて、ドライブシャフトを抜く。

エンジンの上からも、はずせる補器類は外してしまう。

コネクタは札を付けて分からなくならないようにしておく。

そしてエンジンクレーンでエンジンを吊りながらエンジンマウントのネジを抜き、えっちらおっちらとエンジンを傾けながら上に抜き出す。

これが非常に抜きにくいのだ。微妙なところで引っかかり、抜けそうで抜けない。

しょうがないので、バッテリーのステーを一部切り取ってしまった(^^;)

やっと抜けた〜


旧エンジンを降ろしたらミッションとエンジンを分離し、旧エンジンと、新しいエンジンを並べて、補器類の移し換えを行う。ちなみにミッションは完全にボルトオンで装着可能。

やはり世代が新しいだけあって、一部補器類やセンサーが違っている。ここはおとなしく旧4A-Gのものを使うのが良いだろう。

しかしここで問題発生

なんと、4バルブと5バルブではセルモーターの位置が異なるのだ。

したがって、セルモーター自体も互換性はない。おまけに5バルブの方はセルがついて無いのである。

↑左が4バルブ、右が5バルブである。フライホイール側から見るとセルの穴が逆・・・

しょうがないので、中古パーツを入手する事にした。どうやら4A-FE用とかも同じセルを使っているようで、入手はそんなに困難では無かった。

あとはクラッチとクラッチカバーを付け、ミッションとドッキングしてやる。

これで車から降ろした状態での作業は終了である。

ちなみに、旧エンジンに付いていたクラッチだが、エンジンを付けたときに新品にしたものだった。

そのクラッチもさすがに9戦の耐久レースで酷使されただけあって、欠けてるし焼けてるしで酷い状態になっている。

もちろんここは新品のディスクとカバーを付けてやった。

ボロボロですな


今度はミッションと一体になったエンジンをエンジンクレーンに吊り、エンジンルームに上から入れてやる。

もちろんこのときも、エンジンを傾け、ゆすり、時には蹴り飛ばすという手段でエンジンをエンジンルームに納めてやる。

取り付けにくい後ろ側のエンジンマウントもなんとか取付け、無事にエンジンを搭載する事に成功した。

搭載完了!!

通常AE92に5バルブエンジンを搭載する際に問題になるラジエターのアッパーホースの位置も、我がレビンでは今までついていた出所不明大容量ラジエターではドンピシャの位置に来ていたので問題無しだった。

#今まで無理矢理ホース延長して取り付けていたのである(^^;)

しかし、ここからが大変なのである。

言ってみればここまではネジを緩めて締めれば出来る作業だった。

だがこれからはセンサ類やハーネスの配線、セッティングという難しい敵が控えているのだ(^^;)


そういうわけで早速配線をつないでみる。

まずはセルモーター。場所がエキマニ側からインマニ側に移ったので、微妙にコードが届かない。

しょうがないので車体側の配線ハーネス束を出来るだけバラし、何とか届かせる。

次にスロットルポジションセンサーの配線。これはコネクタが同じなのだが実は配線が全く異なるという状態だった。これは線を切断して、ギボシで繋ぎ換えてやってOK。

次にデスビだが、全くコネクタのカタチが違う。これは配線図を見て、ギボシで配線してやる。

その他はセンサーごとAE92用にしてあるので、だいたいOKである。

配線を確認し、よしエンジン始動だっ!とセルを回したが、エンジンがかからない。

どうも点火タイミングが全然合ってない様な感じである。みんなで頭を絞って考えるが、どうもわからない。

そこで、部品取りのAE92で配線図と照らし合わせをしてみる。・・・・・・・・・・

・・・・・・なんだ、デスビの配線間違ってる(^^;)。どうやら配線図を見間違っていた様だ(笑)

よし、今度こそ

きゅきゅきゅきゅ・・(セルの回る音)・・・ばっばば、ばぁんばばばばばばばばばばぁ〜〜〜〜〜〜〜〜

よっしゃぁぁぁっ!!〜〜〜〜

エンジン始動した〜〜〜〜〜!!\(^▽^)/

まだタコ足とか付けて無いのでうるさいのですが、何とかエンジンは始動した。

自分たちで組んだエンジンが始動したってのはキモチが良いもんである。


2001年7月

いよいよエンジンが始動したという事でみんな一安心していたのだが、そこはそれ、そんなに安心できるわけも無いのである。

というわけで問題がまたもや発生

実は4バルブ4A-Gと5バルブ4A-Gでは、エキマニのネジ位置が異なるのだ。最初はAE101用のタコ足を購入したのだが、やはりというか何というか、車体側の位置が合わずに干渉してしまい取付出来ない。

しょうがないのでAE92用のエキマニを使用出来るというSSワークス製のアダプターを購入した。

しかし、これを購入しても今までのAE92エキマニは使用できないのである。

なぜって、前回のレースで激しく割れてしまったのだ(^^;)

しょうがないので溶接して修理してもらうことにした。しかしこれが大失敗だった。

なんと、修理したエキマニに空燃比系取付けを行って、エンジンをかけてみると排気漏れの音が・・・・・

タコ足も溶接してもらって修理したのに何故っ!!と思いよ〜く見てみると、なんと、タコ足から繋がるフロントパイプのジャバラ部から盛大に排気が漏れて・・・・(T_T)

ここはステンメッシュに覆われているので目視では確認出来なかったのだ。これは痛い。

しょうがないのでテスト走行はこのままで行き、本番までに再調達する事にした(号泣)


残る問題はセッティングである。まだ走っていない状態なのでアイドリングの調子しか見る事が出来ないのだが、アイドリングでは無茶苦茶濃い状態で、いくらAFCで調整しても安定しない。

また、これはスロポジかもしれないが、スロットル開度がごく小さい時にハンチングしてしまうという問題もある。


その他にも色々細かい問題はたくさん有る。

例えば水温計のセンサー部が長すぎて付かないとか、オイルクーラーを購入したがオイルブロックのセンターナットのサイズが合わなくて注文中だとか、そのオイルブロックには油温計のセンサーが付かないとか、数えると結構きりが無いのだが、とりあえずこのまま実際にサーキットを走ってみようという事になった。

何せセッティングに関しては、アイドリングはあまり関係ないし、全開している時に合っていれば問題ないのである。

ぐだぐだ言わずにまず走ってみよう!


2001年8月

とりあえず走れるようになったレビンをトラックにのせ、テスト走行の為に8/4にエビスサーキットのナイターグリップに出かけることにした。

前の日の夜(つまり金曜日だ)にばたばたと準備し、土曜は土曜で休みの人が1人しかいないという状態だったが、AKAMA君が手伝ってくれて何とか車を持ち込む事が出来た。

エビスには監督のtomoさんが駆けつけてくれ、また、他のメンバーも仕事終わり次第高速使って駆けつけてくれた。

で、結果だが、「なんだ、普通に走れるじゃん!」だった(笑)

結局調子悪いのはアイドリングだけで、全開時やパーシャル時はAFCでセッティングを取って普通に走れる事が分かったわけだ。良かった良かった。

issi君がドライビング、助手席にTETTUが乗ってセッティングを出す事にした。

・・・横Gが激しく掛かる状態でAFCのモニターだけ見てるのはかなり酔うという事が分かった(笑)

まあそれでもなんとか納得の行くセッティングを出す事が出来たので良しとしよう。

そして今度は1人乗りで待望のタイムアタックを行ってみる。

で、結果は1分10秒台!!!!!!!!

まあ、手計測だしどこまで正確か分からないのだが、確実に今までのベストタイムを上回るタイムをたたき出した!(ちなみに今までのベストは12秒台だったと思う)

アイドリングの燃調が全然取れなかった時はどうなるかと思ったのだが、今までの作業が報われる瞬間である。


その後は排気漏れしていたタコ足を交換し、ちょこちょこと手直しをして、レースに無事出場出来たのであった。

ここにエンジンまで自分たちで製作した、新生ワイルドハーツレビンが誕生したのである。


「レース参戦記」へ戻る

「ガレージ」に戻る